ハロッズというデパート...

ロンドンのナイツブリッジハロッズというデパートがある。グランドフロア、一階から4階迄5階建てになっている。私が一番好きなのは一階のフードフロアだ。床には挽き粉が敷かれ、タイル台には雉や兎が並べられている。私は雉や兎丸ごと買った事がないがビーフは並んでいい所を切ってもらった事は何度かある。私はイギリス生まれでもイギリス育ちでもないから、あのフードフロアに並べられた瓶詰めや缶詰の殆どはよくわかっていないが、本当に様々な種類のいろんなものが一杯並んでいて、ひとつずつ手に取って見て歩くのもとても楽しい。イギリス人の店員のお兄さんは日本人女性の質問を丁寧に答えてくれるのだ。あとで「あんなに質問して買わないで悪いかな?」なんて思ってしまうくらいに。だって買っても食べた事ないものはお料理出来ないものね。ハロッズのフードフロアでいつも買うのがスモークサーモン、紅茶、ビーフ、ポーク、それからワイン。たまにキャビアも買ったかも?
ハロッズでもう一つ好きな所はフードバーでオイスターバーからすしバーまで店の奥にあるのだ。特にオイスターバーがいい。目の前で牡蠣の殻を開けてくれる。イギリスの牡蠣は日本の牡蠣みたいにおなかがでっかくなくて薄くてかわいい。特にロックオイスターがおいしい。オイスターに合うワインはもちろん冷たく冷やしたシャブリ。ああ、思い出しただけでも飛行機に乗ってロンドンに飛びたくなってしまう。オイスターバーは円になっていて、円の中にシェフがいる。お客さん同士顔がうかがえる。和気あいあいとはこのバーに集まるお客さん達。おしゃべり好きのイギリス人らしく知らない人同士で盛り上がるのだ。それがとても楽しくてオイスターにエクストラフレイバーを与えてくれる。私は1ダースの牡蠣と3グラスのワインでハッピー。その後も続きがある。ちょっとほろ酔い気分でハロッズの向かいにあるハイドパークにお散歩。これがセットになってもっともっと楽しくなる。初夏のイギリスは夜9時になってもまだ明るい。日本みたいに蚊もいないし、どんどんどんどん歩いて行ける。ロンドンは一人暮らしにももってこいの街なのだ。ハイドパークの北に行けばスピーカーズコーナーという場所があって誰でもそこでは自分の思っている事をスピーチする事ができるのだ。この写真は資生堂花椿誌のために撮影したのだけれどイメージはスピーカーズコーナー。
photograph by Howard Grey